貴方 3

2004年6月29日 貴方
いつでも部屋の照明を落としているのは何故ですか?
貴方が向かい合うのは、
静かで暗い部屋に浮かび上がる計算機の画面。
辞書のような分厚い本なのに。

こうすれば必ず気付いてくれる。
ヒールを鳴らして部屋に向かうと、
いつしかドアの外の私に気付いて口にする、貴方の世界の言葉が聞こえる。

ほんとうにここにいる?
足を踏み入れれば傍に行ける?
この深い溝を、あの人はどうやって越えたのだろう。

貴方はいともたやすく私の傍まできて、話の続きを語り始める。
その優しさに甘えるのです。
貴方が持つマグの中のコーヒーは、貴方の部屋と同じ色の鏡。
私を映してその中に攫ってしまう。
そうしていつのまにか貴方の手で消えてしまうのです。

貴方 2

2004年6月23日 貴方
その腕に触れてみたいと時々思う。
隣の椅子に座るだけで、
貴方の部屋にいるだけで、
独り占めしている気持ちになるけれど。
貴方に質量があるかどうかを私はまだ知らない。

お昼休みをほんのちょっぴり拝借して、
他愛も無い話をして、
私はこんなに満たされています。

不思議。
貴方の目を見ているだけでこんなに落ち着くなんて、
私にしか効かない魔法が使えるのですね。

もしも生まれかわったら、
あと一歩だけ傍に近づいてみる予定です。
そうしたら、貴方の質量を感じられるかもしれない。
そんな初歩的なことをまだ知らないのです。

今の私には、貴方が夢なのか現実なのか、
確かめるすべがありません。

貴方 1

2004年6月21日 貴方
優しい眼差しが、いつも私に降り注いでいる。

乾燥した土壌に芽吹いたばかりの私の横にずっと立っていて、
陰になり、光になり、水になり。
あなたの包み込むような優しさと知性に、
感嘆する日々がもう4年以上続いています。

長い指も、丸い眼鏡も、あなたの全てが私のものではないけれど、
言葉を交わせる。

それはけっして恋愛感情ではなく、
あなたの世界に入ることを許された安堵です。

今日もそっと扉を開く。

意味

2004年6月18日 ことばの欠片
誰かを好きになるのに理由が要るとすれば
それはあなたの存在

籠の鳥

2004年6月17日 ことばの欠片
また逃げた...

窓辺に立って世界のほうに目をやると
金属の擦れあう嫌な音が聞こえた

それは籠が地面に落ちる音
粉々に割れた籠は
悲しく横たわっている
冷たい床に赤い液体が染み込んでいく

どこに行った?

空が暗くなり
気まぐれな鳥は家に帰る
籠はもう跡形もなく
赤い染みももう消えていた

鳥は懐かしそうに羽を休めながら
しばらく不思議そうに辺りを眺めていた

キミへ 6

2004年6月16日 キミ
キミの声が誰かに届きますように。
キミの瞳が誰かを映しますように。

いまや透明な境界線が私とキミの間を阻んで、
どんなに焦がれても触れることはできない。
私たちはお互い気付かないあいだに、
遠い世界に住むようになっていたのです。

こんなに近くにいるのに。
こんなに救いようのない、遠くの世界へ行くことを選んだのは私です。

見えるけれど聞こえないなんて残酷。
見えるけれど触れられないなんて、何のために見えている?
いっそ世界の外側からこのやり取りを見ることができれば、
その理由にはすぐ気付いたでしょう。

こんなに遠くにいるのに。
痛いほどキミの気持ちが伝わるのは何故。

手を離さなくても、
とうの昔から互いに到達不可能な世界に居た私たち。
キミはそれを見てまた絶望するのでしょう。

キミへ 5

2004年6月15日 キミ
プライドにしがみついて、想い出にしがみついて。
話す言葉に論理はなく、紡ぐ言葉は持続せず、
ただ、刹那の感情を外に出す。

こんなふうに、「優しくされたい」と全身で叫ぶ人を他に知らない。
心から涙を流し、他人を傷つけながら生きてください。

忘れないで。
誰でも優しくされたい。
キミが誰かに優しくすれば、その優しさが返ってくるかもしれない。
与えるだけ、貰うだけなんて優しさが可哀想でしょう?
そんな無機質な道具ではない。

こんな子供騙しの理屈をつければ、
キミを説得できるかもしれない。
もし、キミの手を引けるならば
私はそう言ってキミの手を離し、そっと背中を押しましょう。

私がいる場所はdead-end。
手を離せばキミはもう二度と私に会えない。
私の世界はもう二度と他の世界に接続しない。
楽園から追放されないために、キミは私との接触から逃げつづける。

やっと追い詰めた。
追いかけっこはそろそろ終わりの時間。
覚悟を決めて自分から手を伸ばしたら?
楽園の崩壊は決まった出来事です。

キミには決して変えられない。

キミへ 4

2004年6月14日 キミ
そろそろ覚悟は決まりましたか?
手を伸ばせばまだ間に合うのに、キミは決して人の手を掴もうとしない。

人は永遠に孤独です。
どんなに待っても、キミの心をそのまま理解できる人なんていない。

でもその境界線がないと怖いと思いませんか?
その恐ろしさを味わうよりも、一人が良い。

キミは他人との境界線を知っていて知らないふりをしているだけ。
「自分のことをわかってくれない」から怒り、
「自分は一人で生きてる」と言う。
わかって欲しいのなら強がりをやめれば良いのに。

私を見て彼女から離れたり、
私と偶然会った時には不安定になったり、
私にメールを返すのに、私の顔も見たくないと他人には言うのですね。

私のことはもう忘れた。
記憶もない。
そう言いませんでしたか?

キミにはこの世界をしっかり歩いて欲しい。
そのための手助けならするつもりです。
あの頃の記憶がないならばそれも可能なはずなのに、
何をそんなに怯えているの?
あなたの手をもう一度握れば
あなたの目をもう一度食べれば
あなたの首をもう一度抱きしめれば

きっとあなたは鳥になって空に消えるでしょう
あなたを縛る鎖をといて
そうしてあげたいだけなのかもしれない

キミへ 3

2004年6月12日 キミ
5年経って漸くキミは、新たな宿主を見つけましたね。
でもキミの思惑は外れて、彼女は思いのほかキミのことを理解できない。
彼女は私を利用し、かつ、キミから私を遠ざけたいばかりに
バランスを失いかけている。

キミと彼女は似ているところがある。
他人の心をコントロールしたくて仕方ないところ。
自分が主導権を握っていないと、他人は信用ならないから落ち着かないのね。
元恋人に嫉妬するあまり、直接私に会いに来たあげく、
私は「いい人」「優しい人」だからお友達らしいですよ?
そんなことを周りに言いふらして。
公然と友達になれば、絶対に貴方に危害を加えない保証になるとでも思っているの?
貴方が操っているつもりの周囲の人々はどうか知らないけれど、
私は他人との関係に飢えてはいない。
必要に応じて関係を絶つことなど容易なのです。

そもそも私への嫉妬がある彼女に私の心がコントロールできるわけがない。
コントロールできるなら私への嫉妬は消えるはずでしょう?
彼女の全ての感情は、私の心の何一つとして動かせない。
彼女もそれに気付けば矛盾。今は欺瞞。

少なくともそのことを知っていたキミは
彼女が私に接触したことで不安定になった。
彼女がおかしくなるとでも思いましたか?
それとも私に心を見透かされると自覚するのが怖い?
悪いけど、キミの卑怯な心なんてとうに皆に知れているのよ。

一人で生きるか他人を信用するか。
そんなに難しい選択ですか?

キミへ 2

2004年6月11日 キミ
(忘れたことを無理やり想い出して)
「僕は死にたい」と口癖のようにキミは言う。

若かった私はキミの悲しい言葉に一喜一憂して
泣いたり苦しんだりしました。
ほんとうにキミが消えてしまうのではないかと思い、
理屈抜きで、私を介して、世界につなぎとめておきたかったから。

でもキミは悲しい生き物で、
引き戻す私を見て、自分の存在価値を測っていただけ。
私の目の前で、たびたび自分を刃物で傷つけたのは、
ただ私の気持ちを試していただけ。
ある日その隠された意図に気付いて、私はキミのもとを去りました。

なぜなら、キミが思うように他人の心が信用できないものだとしたら、
キミが他人である私に依存して生きるのは無理でしょう?

この見え透いた矛盾の中、いくら私の心を試しても、
君は満たされることがないばかりか、
永遠にそして無駄に私の心を抉りつづける。
私のキミへの気持ちは決してわかってもらえないという事実に直面して絶望したのです。

キミへ 1

2004年6月10日 キミ
本当に記憶を消したいとしたらどういう方法にしますか?
お酒を飲んでも、醒めればまた同じこと。
死ぬ?
そんなに短絡的にならなくても、生きていれば忘れます。
時間が経てば生きるために必要でない記憶は消える。
嫌いな人なら無視、苦い記憶なら改竄。
人間の自然な自己防衛です。

要するに、記憶によって未だになにかを惹き起こすようなら
それは忘れたくない記憶ということ。
自分が無意識に執着している対象を確認する瞬間です。

一つだけ明言しておきましょう。
私はキミのことは忘れました。
忘れていないのはキミの方。

今、君の話を聞いても私の心は何一つ動かないし、
そもそも記憶自体がない。
キミが誰かに言うとおり、本当に記憶がないのなら
私の反応で何故情緒不安定になるのですか?
自己矛盾している割にいつまでも自分の矛盾を認められない体質。
変わらないですね。
相変わらず人間らしくない。

皮肉なことに、
キミのことを一番わかっているのは私。
後にも先にも、私以上にキミのことを理解できる人はいない。
それに気付いて怖いのでしょう。

いつになったら前を向いて歩けるの?
私がいなくて歩けないのなら、キミはここでおしまい。

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